only oneであること、すなわち、「唯一無二の手作りの仕事」を成し遂げるためには、事件の当事者の人間性・考え方・感性等を把握し、事件の事実関係、事実関係を支える証拠関係を分析検討し、関連する法律的知識を駆使し、事件の筋を見極め、論理力・説得力をもって書面を作成し、裁判官や事件関係者を説得しなければなりません。そのためには、クライアントと弁護士がイシューを共有し、人間としての本質的な部分で共感しあいながら、関係者全員の英知を結集させることが不可欠となります。それはさながら手作りの共同作業によって完成される芸術作品のようなものです。そのために弁護士に要求されるスキルは、論理力・推理力・分析力・説得力・文章作成能力であり、それらのスキルが人間性・人生観・感受性・哲学といった全人格的なものに裏打ちされたものでなければなりません。
職人や芸術家による創作活動には常に限界が設定されることがないのと同じように、弁護士のスキル(全人格的な能力)もまた常に磨かれ、飽くなきスキルアップが追求され続けなければなりません。弁護士としての経験値は、論理の構築や事実関係の調査分析等に費やす時間を短縮させてくれます。しかし、それに伴って追求心・向上心・情熱といった当該事件に対するマインドが失われるようなことがあってはなりません。それは、魂の抜けた芸術家と同じであり、見る者に対して感動を与えることはできません。
しかし、弁護士が職人や芸術家のようにその道のプロとしての気概を持ち続けている限り、その仕事の成果は必ずやクライアントの心に響き、納得を得られるものになるものと確信しております。
私は、幸いにも、これまでに弁護士として多くの裁判実務に携わることにより自身の能力を磨くことができました。これからも、裁判実務に携わる弁護士として、常に完成度の高い芸術作品を求めて、芸術家そして職人であり続けていきたいと思います。